木村さんのリンゴ
木村さんのリンゴ
何の変哲もない言葉だが、これが今や押しも押されもしないリンゴのブランドになっているらしい。
NHK水曜22時からのプログラム「プロフェッショナル」でそのリンゴを作る木村さんが出演されていた。職業は一般的にはリンゴ農家な訳です。しかし、木村さん曰く「リンゴの木お助け業」だと。
改めて説明します。木村さんは、青森県いわき市でリンゴを生産する農家なのですが、他のリンゴ農家と違うのが、30年前から「自然農法」を取り入れてリンゴを生産しているのです。このリンゴが、野性味あふれる甘みを蓄えて、とにかく美味しいと評判のリンゴな訳です。そして、この木村さんの実践している自然農法というのが、農薬や化学肥料だけでなく、なんと堆肥なども使わない。とにかく、野生において生長できる植物に、農薬や堆肥を使わないで生産する方法がない訳がない、と言うわけです。
その結果たどりついたのが、リンゴの木が自然に育つことを助ける農法、つまり「リンゴの木お助け業」です。
もちろん、最初からうまくいったわけではありません。農薬で木村さんの手が荒れ、木村さんの奥さんの顔が腫れたのがきっかけで「自然農法」に興味を持ち、試みること実に8年。最初は、とにかく収穫どころか、虫はつく、葉が全て落ちると散々な結果。へこたれない木村さんは、独学で栄養を学び害虫を学び病気を学び、試して試して試して・・・。ついに6年が経過したある日、その日の仕事を終えて家族が家に引き上げた畑で、ハシゴに腰掛けて一人思う内に、よからぬ思いに駆られて岩木山へ登ったそうです。そう、死を決意して・・・。
死に場所を探して、山の中を歩き回る木村さんが、ふと顔をあげると眼前にあったリンゴの木に、はっとするが・・・、よくよく見ると葉の形のよく似たどんぐりの木。ここで木村さんは思いました。「何故、野生の木は、人間が何の手だてもしないのに虫にも食われず、葉も落ちないのか?」と思うやいなや、そのどんぐりの木の根本を掘り返し、その土の柔らかさに愕然としました。
畑の土と全然違うのです。その事に気付いてからの木村さんは、とにかくどうやったらあの土が畑で再現できるか?をひたすら探求したそうです。その結果が、現在も続いている雑草を刈らない事だったり、畑を踏み固めてしまう大型機械(スプレイヤー)を使わない事だったり。
小林さんには、昨年から佐々木さんという建設業から小林さんのリンゴ作りに憧れて、遠野でリンゴ作りを始めた弟子がいます。一年目で、うまくいかず肩を落とす佐々木さんに小林さんの掛けた言葉が印象的でした。「壁を乗り越えてやっていけば・・・、実るから。」愚直なまでに自然農法を信じ、自分を信じ、そしてリンゴの木を信じて経験を積み上げてきた小林さんの言葉は、とても重く力強いものでした。
更に小林さんは、リンゴの木を思う気持ちを「心」と表現し、プロフェッショナルとは?の問いに「心と技術の伴った人がプロじゃないかなぁ?」と素朴ながらも、ずしっと来る言葉で番組を締めくくっていました。
本当に、今日の「プロフェッショナル」は、自然が相手という一見自分とかけ離れた仕事に見えながら実は、積極的に取り組んで得られた経験が何事にも代えがたいものだと言うことを改めて教えてくれた素晴らしいプログラムでした。
挑戦・経験・感謝・・・成功者の伝えることは共通点が多いと改めて思いました。小林さん、ありがとうございました。