魅力的な人 田尻悟郎さん(関西大学教授)
今日の朝日新聞で、田尻悟郎さんを思いだした。
そう、少し前にTVで見て知っていたのだが名前をすっかり忘れていた。そして、名前と一緒に彼の魅力を思い出した。僕より10歳も年上なので、彼と言うのは失礼なのだがこんな時に何と表するのか、思いつかない。
そんな話はともかく、この田尻氏、朝日新聞の冒頭の一説を借りるとこう始まっている。
「教師はエンターテイナーでなければならない-。これが「ニューズウィーク日本版」に「世界のカリスマ教師の一人」と紹介されたこともある、この人の信条だ。」
この田尻氏はこの度関西大学の教授になるのだが、これまでは島根県出雲東中学校の英語教諭だった。そしてもっとさかのぼると、島根大学を卒業した田尻氏は、神戸市内の中学校に英語教師として赴任した。この当時、今から25年程前は校内暴力全盛の時期であり、田尻氏の赴任先もその例外ではなかったようだ。そんな中で田尻氏は、どうしたら教師としての威厳を保てるか、要は生徒にナメられないかを考え、サングラスを掛けて風貌で威嚇し、更に暴力で生徒を押さえつけるという作戦を取った。
この作戦は功を奏し、彼が指揮を取った野球部は他チームに勝る団結力で地区大会で優勝したそうだ。これだけを聞くとそれこそ当時の人気TV番組だった「スクールウォーズ」を彷彿とさせる・・・いや、「スクールウォーズ」の先生はサングラスも暴力もなかったか。ま、ある種の美談のようにも聞こえるが、その優勝した年の生徒達から卒業式の日にこう言って感謝の言葉を掛けられたそうだ。
「先生、俺達先生のお陰で優勝できたよ、ありがとう。」
この言葉を耳にして、思わず瞼が熱くなりそうになった田尻氏に、次の言葉が続いた。
「俺達、先生が憎くて、ただ先生を見返すためだけに必死になった。そのお陰で優勝できた。」
さらに、
「先生への恨みは一生忘れない。」
TVで見た正確な言葉は忘れたが、たしかこんな言葉が向けられたと記憶している。
これを聞いて田尻氏は愕然としたそうだ。
自分がやっている事は教育じゃない。ただ支配する者と支配される者の関係を作っているだけだと。そう考えた田尻氏は、その翌翌年、失意の内に地元である島根県の山間の中学校に赴任し、「生徒に判る楽しさを教えたい」と言う基本に帰った工夫をほどこした授業を考えるようになった。
そして、様々なユニークな勉強法を考え出し、生徒達に慕われそして生徒達の成績もアップさせるという今の指導法を身に付けだのだ。その創意工夫が買われて今回、関西大学の教授として声が掛かったのは、まさにあらゆる意味で田尻氏の試みが認められたと言うことなのだろう。
この田尻氏の話を聞いた時に僕が凄く魅力的だなと思ったのは、やっぱり最初に赴任した学校での徹底したスパルタ教育も含めた、彼の一生懸命さだ。スパルタと言ったって、中途半端な保身だけであれば、生徒にはすぐ見抜かれるし、野球部の実績だって付いてこなかっただろう。勿論、だからといってスパルタを肯定する気はないし、身体だけでなく心を傷つけてしまった生徒もいるかも知れない。でも、それはスパルタであろうと無かろうと、いや返って中途半端な教師の方が生徒に与える悪い影響はあると断言しておく。このスパルタがあって、生徒の反骨そして訴えがあり、2年にわたって苦悩した結果が今なのだと思う。
つまり、すべては田尻氏の必死に考えそして行動した結果であり、貴重な経験の上にあるものである。こうした話を目にする度に自分と比べるのですが、なかなか頭でっかちは解消しない。それでも、一生懸命が人間の魅力であることは間違いないことであり、自分が一生懸命に生きる力を本当は持っていると言うことは信じている。
田尻教授は、教育再生会議に入ったりするのかな?